まず結論から
- 墓じまいで取り出した遺骨の行き先は、ほかの人の遺骨と一緒に納める永代供養の合祀・合葬墓が43.2%で最多です。樹木葬が24.1%、墓石のある一般墓が14.3%、納骨堂が13.3%で続きます。
- 行き先は、石材店やお寺が決めてくれるものではなく、施主が工事の前に決めます。遺骨を別の墓や納骨堂へ移す「改葬」の許可申請書に、移す先の名称と所在地を書くためです。
- 費用は行き先で変わります。平均購入金額は、一般墓155.7万円、納骨堂79.3万円、樹木葬67.8万円です。都立霊園の合葬の施設は1体3万8千円からで、納めた遺骨は返還されません。
- 自宅に置く場合と散骨する場合は、改葬許可が要りません。刑法190条は、遺骨を遺棄した者を三年以下の拘禁刑に処すると定めています。
- 古くて誰の骨か分からないときも、申請はできます。下関市は「〇〇家先祖〇体」のように書くと案内しています。
取り出した遺骨は、どこへ納める人が多いのか
取り出した遺骨の行き先を、先に数字で見ておきます。お墓の情報サイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書は、2026年1月に調査をしました。対象は、サイトを通じて資料請求や霊園の見学をした人のうち、改葬や墓じまいを検討または実施した人です。有効回答は733件です。まず、同じ霊園の永代供養の墓へ移した人の記録です。
父を見送ったあと、父名義の墓をしまった当事者・施主(個人ブログ・アメブロ)
永代供養墓は山の斜面に比較的大きな寝釈迦像(涅槃像)をあしらった、なかなかおしゃれな作りで、内部には棚があって、そこにお骨をしまうスペースがある
父、祖父祖母は空いているスペースに並んで配置された
そこに納められている遺骨は、毎年4月に散骨されて【合祀】される
墓は、祖父が祖母のために建てたものでした。中の2柱を出し、父の遺骨と一緒に納めています。調査でも、永代供養の合祀・合葬墓が43.2%で最も多く、2024年の前回の30.9%から増えました。
出典: 墓じまいをした(アメブロ)(台帳: V0009)
樹木葬が24.1%、納骨堂が13.3%で、継ぐ人を必要としない形を選んだ人は約8割にのぼります。墓石のある一般墓への改葬は14.3%で、前回の22.3%から減りました。
工事を請ける側の見方も、同じ向きです。日本石材産業協会は2023年度、会員の石材店に、遺骨の行き先を多い順に尋ねました。多い行き先として最も挙げられたのは永代供養の施設で、散骨、自宅、手元供養は最も少ない側でした。
遺骨をどうするかは、誰が、いつ決めるのか
石材店は、受注のときに、遺骨の行き先が決まっているかを確かめます。決まっていないと、墓じまいのあとに遺骨をどうするかが問題になるためです。決めるのは施主で、順番は工事より前です。次は、都会の墓には先祖代々の遺骨が入りきらないと知ったあとの、父との会話です。
金沢の奥にある父方の墓を、東京の近くへ移そうとした当事者(個人ブログ・note)
その旨を父に話すと
「だったらお寺さんにお願いして 古いお骨はこっそり川に流してもらうとかできんかなー」
と言い出すので
「人骨の遺棄は犯罪だよ…」 と話しました
これは法律で決まっていて 取り出した遺骨を勝手に処分することは 禁止されているんですね
さらに墓じまいには 改葬許可申請という行政手続きが必要で
これ自体は数百円程度なんですが 新しい納骨先が決まっていないと申請できない
10年ほど前の話です。この家は、墓を移すのを見送りました。宇治市は、改葬先が決まってから申請するよう案内しています。申請書に、改葬先の名称と所在地を書くためです。
出典: お墓じまいに挫折(note)(台帳: V0025)
八王子市の案内でも、改葬先を決めるのが、申請書より先です。改葬先の管理者から、墓地の使用許可証か、遺骨の受入証明書をもらいます。受入証明書は、移動先の管理者が、遺骨を受け入れると証明する書類です。
全体の順番は、次のようになります。見積もりは、複数の石材店に頼みます。北九州市も、市営霊園の工事について、複数の業者から見積もりを取るよう勧めています。頼む相手の分け方は、墓じまい業者の記事にまとめました。
遺骨を取り出す前に、墓から霊を抜く法要(お霊抜き)をします。取り出したら、改葬先の管理者に改葬許可証を出して納めます。最後に墓石を撤去します。墓石の撤去は、使用者の義務とされています。
遠くの納骨先へ送るときは、運送会社で扱いが違います。ヤマト運輸は、宅急便で送れないものに遺骨を挙げています。日本郵便のゆうパック約款が引受けを断る荷物に挙げるのは、危険品、不潔な物品、愛護動物、現金などで、遺骨は挙がっていません。
墓を開けたら、何が出てくるのか
墓の中に、誰の骨が何体あるのか。八王子市は、手続きを始める前に、遺骨の数と、火葬骨か土葬骨かを、今の墓地の管理者に確かめるよう求めています。法要の日に、納骨室を開けた人の記録です。
夫を亡くし、義父母の墓をしまった60代の当事者(個人ブログ・アメブロ)
中は案外広くて、骨壷がふたつ置いてありました。義父母のものです。その奥には、おそらく複数のご先祖様のご遺骨が、骨壷から出された状態で置いてありました。それを拾って、義父母の骨壷に納めていただきました。
僧侶が帰ったあと、石材店が納骨室のふたの石板を外した場面です。骨壺はさらしと風呂敷で包み、改葬先の寺へ運びました。古くて氏名や人数が分からない遺骨は、下関市では「〇〇家先祖〇体」のように書いて申請します。
出典: 墓じまい。閉眼供養が終わりました。(アメブロ)(台帳: V0095)
開けたときの状態ごとに、自治体の案内を並べます。分からない項目があっても、申請はできます。
| 開けたときの状態 | 自治体の案内 |
|---|---|
| 誰の骨か分からない | 大津市は、遺骨の詳細は市で管理していないので、墓地の管理者に尋ねるよう案内しています。宇治市は、それでも分からない項目は「不詳」と書くとしています。 |
| 氏名も人数も分からない古い骨 | 下関市は、「〇〇家先祖〇体」や「〇〇家先祖複数体」のように書くとしています。 |
| 土葬の骨が出てきた | 八王子市は、火葬骨と土葬骨で申請書を分けます。土葬骨を市内の墓地へ移すなら、一度火葬が要ります。 |
| 土に還って骨が残っていない | 厚生省の1957年の通知は、遺体や焼骨がすでに無ければ改葬に当たらないとしています。大津市は、土を移したいときは改葬先の管理者に相談するよう案内しています。 |
宇治市は、土に還っているかどうかは改葬先の墓地が判断するとして、改葬先に確かめるよう案内しています。
行き先ごとに、いくらかかるのか
行き先を選ぶときは、費用も判断の材料になります。鎌倉新書は2025年1月、「いいお墓」を通じて墓を買った人を調べました。有効回答は1,475件で、墓じまいをした人に限らない数字です。公営の合葬の施設は、規則や市の案内で使用料が分かります。
| 行き先 | 費用の手がかり |
|---|---|
| 墓石のある一般墓 | 平均購入金額は155.7万円でした。 |
| 納骨堂 | 平均購入金額は79.3万円でした。 |
| 樹木葬 | 平均購入金額は67.8万円でした。都立小平霊園の樹木型の施設は、1体20万円です。 |
| 合祀・合葬墓 | 都立霊園で、はじめからほかの遺骨と一緒に納める形は、1体3万8千円〜5万8千円です。浦安市は、市の墓地公園の墓から合葬式墓地へ移す場合、1体35,000円です。 |
公営の施設の使用料は、1体ごとに数えます。国民生活センターの月刊誌「国民生活」の特集は、永代供養墓に納める費用が、新しく墓を建てるより高くなることもあると指摘しています。骨壺ごとに一定の期間管理する施設では、料金が骨壺の数だけ積み上がるためです。骨壺1つで30〜50万円という設定の例が挙がっています。
特集は、6つの骨壺の遺骨を2〜4つに納め直す方法にも触れています。その場合は、納めきれない遺骨の扱いが問題になります。
最も多く選ばれている合祀・合葬墓では、遺骨がほかの人の遺骨と一緒になります。都立霊園の規則は、合葬、樹林型、樹木型のどの施設でも、埋蔵した遺骨は返還しないと定めています。全日本仏教会と大和証券の2024年度の調査では、ほかの人の遺骨と一緒に納める合祀に、抵抗がある人が57.1%でした。石材店も、行き先を家族や親族に相談しているかを確かめています。
墓石の撤去を含めた総額の分布は、墓じまい費用の記事にまとめました。公営墓地の撤去費の助成は、墓じまい補助金の記事にまとめました。
自宅に置く、散骨する、捨てる。それぞれの扱い
別の墓や納骨堂へ移さない場合の扱いです。総務省行政評価局の報告書に、厚生労働省の見解が載っています。墓じまいで取り出した焼骨を自宅に置く場合も、散骨する場合も、改葬許可は要りません。
| 行き先 | 改葬許可 | 知っておくこと |
|---|---|---|
| 別の墓・納骨堂・永代供養墓・樹木葬 | 要ります | 今の墓がある市区町村に申請します。樹木葬も、許可を受けた墓地に埋める形です。同じ墓地の別の区画へ移すときも要ります。 |
| 自宅に置く | 要りません | あとで納骨するときは、改葬許可が要ります。札幌市は、今の管理者から埋蔵・収蔵証明書をもらい、遺骨と一緒に保管するよう勧めています。 |
| 散骨 | 要りません | 下関市は、散骨は法律が想定していない行為で、改葬許可証は発行されないとしています。事業者向けのガイドラインは、形が分からない粉状に砕くよう求めています。 |
下関市は、あとで納骨する予定で一時的に持ち帰る場合、自宅を改葬先にして申請するとしています。扱いは市区町村で違うので、今の墓がある市区町村の窓口に確かめます。
遺骨を捨てることはできません。刑法190条は、遺骨を遺棄した者を三年以下の拘禁刑に処すると定めています。墓地埋葬法4条は、焼骨を墓地以外の区域に埋めることを禁じています。
まとめ
墓じまいで取り出した遺骨の行き先は、永代供養の合祀・合葬墓が43.2%で最多です。樹木葬、一般墓、納骨堂が続きます。行き先は施主が決め、順番は工事より前です。改葬許可の申請書に、移す先を書くためです。平均購入金額は一般墓155.7万円、樹木葬67.8万円で、都立霊園の合葬の施設は1体3万8千円からです。
自宅に置く場合と散骨する場合は、改葬許可が要りません。誰の骨か分からなくても、「不詳」などと書いて申請できます。迷ったら、今の墓がある市区町村の窓口と、墓地の管理者に尋ねましょう。
墓を開けて、遺骨を移した3人の口コミ
最後に、墓を開けて遺骨を移した3人の記録から、一節ずつ紹介します。
母を見送ったあと、弟が進めた実家の墓じまいに立ち会った当事者(個人ブログ・note)
本来なら骨壺にはそれぞれの名前が記されているはず、と石屋さんが言ってましたが、最近のものはわかっても、昔の物は誰なのかがわからないまま、仕方がない状況でした。
出典: 墓仕舞い(note)(台帳: V0070)
祖父の四十九日に、山口にある地域の墓地の墓をしまった当事者・孫の立場(個人ブログ・note)
ただ、骨壷には水が溜まりやすいと話は聞いていたのですが、湿った山間のなかだからか思ったよりも水が骨壷に溜まっておりました。場合によっては、飼ってた犬など見当のつかない骨が入ってることもあるそうですが、今回は帳簿通りの納骨となりました。
出典: 墓仕舞いをした話(note)(台帳: V0039)
市営霊園にある先祖の墓を、臨月にしまった30歳の当事者(個人ブログ・note)
しばらくして、予定通りにゆうパックで骨が届いた。家にはわたしひとりだった。
段ボールのてっぺんに貼り付けられた品名は「お骨」。
見慣れた”こわれもの”の赤いシールが隣に並んでいて、ビン類と同じ扱いだった。
出典: 先祖の遺骨と、妊婦のわたし〜30歳の墓じまい(note)(台帳: V0057)